最近、有難いことに『プロダクトデザイナーの求人』が増えている様に感じます。特に中途採用の応募が活発化していますね。
それは何故でしょうか?
この記事でプロダクトデザイン、工業デザイン業界における人材流動の考察をしたいと思います。
今年、転職を視野に入れているプロダクトデザイナーさんの参考になれば幸いです。
30代の転職が多いプロダクトデザイン業界
プロダクトデザイナーの転職はそのほとんどが『30代の転職』です。
20代、30代、40代、50代。
やはり求人で最も求められるているのは30代。即戦力の人材でしょう。
一方、グラフィックデザインなど2Dのデータ上で完結できるデザイン分野は20代での転職も盛んに行われています。仕事歴2〜3年で次のキャリアアップの為の転職をする人も少なくありません。
しかし、プロダクトデザインはその特性上『一人前』になるまで時間がかかりますよね?3Dデザインスキルは一朝一夕では身につかない上、エンジニアリングや工法の知識も必要です。
通常、5年〜6年の経験を経てようやく「よしっ!次のステージに進もう!!!」という自信と実力が身につくのではないでしょうか?ちょうどこの頃、30代になりますね。
現状『20代で才能が花開くプロダクトデザイナー』は非常に稀でしょう。
なので、30歳を過ぎるとキャリアに野心を持っている多くのプロダクトデザイナーさんが一斉に転職活動を始めます。恐らくこの記事を読んでいるあなたも20代後半か30代ではないでしょうか?
20代のうちは、目の前の仕事でいっぱいいっぱい。
40代になると、既に自分の居場所が決まっている。
きっとそんな人が多いのだと思います。
『担当デザイナー』『プレイングマネージャー』層が不足している
現状、プロダクトデザインの中途採用の募集で求められる人材は39歳以下が多いです。
実は今、プロダクト業界全体をみると40代半ばから50代の人材が若い世代と比べて非常に多いという問題があります。団塊ジュニア世代の人たちですね。
人材の年齢別分布グラフでみると逆ピラミッド型の非常にバランスが悪い状態なのです。。。現在あなたが所属している会社もその様な傾向がありませんか?
多くのデザイン現場では『管理者(マネージャー層)』は沢山いるのに『担当デザイナー(プレイヤー)』が足りていない状況がここ数年続いています。(どちらかというと大きい規模の会社に見られる傾向)
『働き盛りの30代のデザイナーは転職しやすい環境が整っている』
こう考えて良いでしょう。原因は2つあります。
まず1つ目の原因。
これは上記の話しとも関連しています。
10年〜15年後、日本社会では団塊ジュニアの方々が一斉に定年を迎えます。
今まで日本のものづくりを支えて来た『ベテランプロダクトデザイナー』の方々も物凄い勢いで現役から離れてしまいます。。。業界全体としては由々しき問題ですが、これが中途採用の求人が増えている1つの要因には間違いないはず。
企業もこれからの大量定年者が出ることを前提に人材の募集をかけています。転職活動をしている人にとっては追い風要素ですね。
2つ目はこちら。
2000年代後半からつい最近まで、プロダクトデザイナーになるのには難しい時期でした。ここ最近の『家電業界の不振』の影響で、新卒プロダクトデザイナーになる人材も相当絞られていましたね。(新卒募集が無い大手企業もありました)
企業としても「デザイナーが欲しいのに、新卒を多く採用出来る余裕はない」というところが多かった様に感じます。
(注:とはいえ美大や専門学校に進むデザイン系の学生の数も減っているので、新卒就職倍率はさほど以前と変わっていないと思います。「プロダクトデザイン業界に入ってくる人の数が減っていた」という感じでしょう)
☆☆☆☆☆
この様な理由から『担当デザイナー(プレイヤー)不足』は当分の間続くはずです。
なので2017年以降『30代プロダクトデザイナー』の転職は益々売り手市場となると予測します。特に担当レベルからプレイングマネージャーレベルまでのデザイナーさんには朗報ですね。
『英語』『中国語』など語学力の重要性が増して来ている
また、最近のモノづくり産業の動向として急激なグローバル化があげられます。
それに伴い、プロダクトデザイナーにも『英語』『中国語』など語学力を求められる機会が増えています。デザイナーの求人欄をみても『語学力を優遇する会社』が増えていますよね?
これは大企業、中小企業、全てに当てはまる傾向です。
今後キャリアアップを考えているプロダクトデザイナーさんは、デザインスキルだけで無く語学力を向上させておくとチャンスが広がるのは間違いなさそうです。
場合によっては『デザインスキル』に磨きをかけるよりも『語学力』の方が強力な武器になる可能性もあるのではないでしょうか(汗?
今はまだ、『語学力あるデザイナー』という人材が希少です。
新卒での就職を考える際も、語学力は非常に有利に働くでしょう。
デザイナーのキャリア形成は1、2回転職した方が優遇される?
『デザインスキル』『語学力』の他に、今後デザイナーに求められるのは『どんな環境や状況でも柔軟に対応できる力』だと思われます。
今は変化の激しい時代で、様々な分野でパラダイムシフトが起こり始めていますよね?
さらに、取引先も日本だけに留まらず、違う文化を持った海外の人とのやり取りも増えています。デザイナーにも『デザインスキル』だけで無く『広い視野』や『様々な経験』『柔軟な対応力』が要求されています。
そんな中、「環境が変わっても成果を上げられる」という評価は非常に価値があるものでしょう。
以前は「転職回数が多すぎて、転職しずらくて困っている」という話を聞きましたが、最近では逆に「転職回数が少なくて困ってしまっている40代転職希望者がいる」という話を聞くくらいです(汗
会社は「今いる優秀な人材には転職して欲しくない」と思うと同時に「中途採用するなら広い視野を持った柔軟性ある(転職しても結果を残している)人材が欲しい」という矛盾を抱えています。
プロダクトデザイン業界は他のデザイン業界よりも人材流動性が少ないですが、1〜2回の転職経験は今後のキャリアに良い影響を与えてくれるかもしれませんね。
(注:企業の中には今尚『叩き上げ人材』を優遇するところもあるので、転職する際はしっかり情報収集しておきましょう。その様な文化がある会社に中途で入社しても余り良い気分にはならないかもしれません)
今後の注目点:家電メーカーの新卒募集は増えるのか?スタートアップはどれほど事業が伸びるのか?
プロダクトデザイン業界の働き口としては、『家電メーカーの不況』がいつ改善されるのかも気になるところです。
不況で新卒求人の窓口が狭くなってしまうのは非常に困った問題ですよね。そろそろ改善しても良い時期だと思うのですが、はたして2017年はどうなるのでしょうか?
また、プロダクト系のスタートアップも今後の動向が気になるところです。新しいデザイン人材の受け皿としても期待したいですね。
(『バルミューダ』や『WHILL』などなど)
まとめ
【2017年、プロダクトデザイナー募集状況】について『デザイン業界の歩き方』の見解は、
◾︎30代のプロダクトデザイナーには転職チャンスが多い
◾︎語学力があると殊更望ましい
◾︎今後のキャリア形成を考えると転職経験は非常に重要
◾︎家電メーカー、スタートアップの動向は今後も要注目
という結論です。